【15】できる人とできない人の違い
まず最初に断っておくが、筆者は「できる人」ではない。完全に「できない人」の部類に入る。長年「できない人」をやっていると、不思議なことに「できる人」と「できない人」の違いが、おぼろげながら、わかってきたような気がする。今回はこのことについて深掘りしてみたい。
ところで、「できる人」と「できない人」の割合はいったいどのくらいだろうか。厳密ではないものの、アメリカのある調査結果がそのヒントを与えてくれる。
その調査では、「あなたは物心ともにとても豊かな人生を送れていますか」というアンケートに対して、全体の約10%の人が「Yes」と答えたという。その人たちの所得を合算すると、なんと国民所得(?)の80%以上あったという。まさに、「超お金持ち」であるばかりか、精神的にも満ち足りた生活を送っているとのことである。
次に、約75%の人がいわゆる「その日暮らし」の生活を送っていると答え、残りの約15%は、物心のどちらか、またはその両方が「破綻間近」であると回答したようである。
この調査結果をふまえると、少し乱暴だが、「できる人」というのは、物心ともに成功を勝ち得ている人で、「できない人」というのは、ギリギリの生活者であったり、経済的または精神的な破綻に直面している人であると捉えることができそうだ。その前提に立てば、「できる人」と「できない人」の割合はおおよそ、「1:9」ということになる。この数字は自身の実際のビジネスキャリアを振り返ってみても、あながちおかしなものではないと感じる。
実はもうひとつ面白い調査結果がある。
この調査は「あなたは人生や仕事の目標を紙に書いたり、部屋の壁に貼り付けたりしていますか」というアンケートであった。多くの人は、人生や仕事における目標や夢を心に抱いていると思うが、心に抱いた目標や夢を、可視化できている人の割合を調査したものである。
結果は、次のようなものであった。
*目標や夢を可視化できている人 約10%
*目標や夢はあるが、可視化はできておらず、漠然と心の中にあるだけの人 約75%
*目標や夢など全くなく、人生なりゆきで暮らしている人 15%
実は、以上2つの異なる調査結果には見事なまでの相関関係があることが判明している。
2つ目の調査主体が、試しに、目標や夢を可視化できているという約10%の人の経済的状況を分析したところ、なんとその人たちは、たいへん裕福かつ健全な生活を送っていたという。
すなわち、物心両面での人生の成功者と目されている層は、過去に自分が可視化した目標や夢を実現している(あるいは実現途中の)人たち、すなわち「できる人」たちだということはできないだろうか。
ちなみに、これも筆者の実体験であるが、「できる人」が持つ手帳はバインダー式で非常に分厚く、スケジュール以外にも、おそらく目標や夢など、いろんなことがびっしりと書き込まれていたはずである。また、彼らはいつでもその手帳を携行していて、ことあるたびにその手帳にメモを残していた。その姿は、まるでコンピュータのバッジ処理のように、常に自身の目標や夢の進捗状況を更新しているかのようであった。
このようにみてくると、「できる人」と「できない人」の違いは、目標や夢を可視化できているかどうかの違いと言ってもよいのではないだろうか。
可視化された目標や夢は常に自分の意識の中にあり、日々の行動も自ずとその目標や夢を実現することに向かっていくものである。ただし、いくら可視化されているといっても、いつのまにか目にしなくなるような一時的な可視化であれば、そんな目標や夢は全く絵空事であるといってよい。確固とした目標や夢であれば、毎日、四六時中目にするものであり、意識するものである。そして最後には、無意識の中にまで刷り込まれるものだといわれている。
最後にまた繰り返すが、筆者は決して「できる人」ではなく、間違いなく「できない人」である。最後まで「できない人」のまま人生を終えることになりそうである。しかし、時すでに遅しではあるが、ようやく「できる人」と「できない人」の違いはわかったような気がする。少しでも将来のある人の参考になればと思う次第である。