【21】プロとアマの違い
どんな世界にもプロとアマが存在する。野球、サッカーなどのスポーツや音楽、囲碁・将棋、作家など、数え上げればキリがない。
そもそも、プロ(プロフェッショナル)とアマ(アマチュア)の違いは何だろうか?
よく、職業(本業)であるかどうか(それによって収入を得ているかどうか)とか、実力・レベルの差ということが形式的な違いとしてあげられているが、ここでは、もっと実質的、本質的な違いを考えてみたい。
まずは、先賢たちの言葉を引用したい。
著名な詩人・書家である相田みつをは言う。
「プロというのは寝ても覚めても仕事のことを考えている。生活すべてが仕事。そこがアマチュアとの絶対差だ」
また、かつて日本を代表する経営コンサルタントといわれた船井幸雄は、
「プロとは考えずして正しい答えが出る人」、つまり、何か相談を受けてもその場で即答できる力、いわば、直観力が働く人のことだと言った。
さらに、一代で日本電産を世界的大企業にまで育てた永守重信氏はこんなエピソードを語っている。
永守氏が海外出張のため飛行機に乗ったところ、たまたま世界的ピアニストと隣り合わせた。その人は機内食を食べ終わると、すぐにピアノの鍵盤の模型を取り出して、おもむろにそれを叩き始めた。
不思議に思った永守氏が理由を尋ねたところ、そのピアニストはこう答えたそうだ。
「1年365日1日たりとも練習は欠かせないんです。仮に練習を1日休むと自分に(練習していないことが)わかるんです。2日休むとパートナーに(練習していないことが)わかるんです。そして3日休んでしまうと、観客に(練習していないことが)わかるんです。」
これを聞いた永守氏は、プロの世界にたどり着くためには地道な練習の継続以外に近道はないということを痛感したそうである。
最後に、東証1部上場のカー用品チェーン「イエローハット」の創業者である鍵山秀三郎氏のプロアマ観について紹介しておきたい。
鍵山氏いわく、何事も80~90%を成し遂げることはそれほど難しいことではない。大多数の人がこのレベルには達することができる。しかし、難しいのは、残りの10~20%をどうやって仕上げ、完璧なものにするかだ。これをやれる人はひと握りの人しかいない。
もちろん、後者が鍵山氏のいうプロである。プロは100%に仕上げるために極限の努力を惜しまない。この努力ができるかどうかがプロとアマの差である、と。
冒頭に述べたように、職業としているかどうかをプロアマの形式的区分基準だとすれば、社会人の多くは何らかの職業についているわけなので、みんなプロでなければならない。医者や弁護士、大工といった専門家でなくても、職業人はみなプロであり、アマチュアの職業人などはいないはずだ。
問題は実質的区分基準に適合しているかどうかである。先人が述べたようなプロとしての仕事が今できているのかいないのか、自問自答する必要がある。
もしあなたが接客業なら、来店するお客様や雇い主に対して自分はプロとしての仕事をしていますと胸を張って言えるだろうか? どんな職業であろうが、問われていることは同じである。社会が求めているものは間違いなくプロであり、プロとしての仕事である。真のプロだけが社会から評価され、必要とされるのだと感じる。