【8】ジョン・F・ケネディの箴言

 1961年に第35代アメリカ合衆国大統領に就任した、ジョン・F・ケネディはその就任演説で次のような言葉を発している。

 Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.

 国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何を成すことができるのかを問うて欲しい。

 言うまでもなく、当時は、アメリカや西欧諸国に代表される資本主義・自由主義陣営とソ連や東欧諸国に代表される共産主義陣営との政治的な対立の時代。国際情勢は、いわゆる「冷戦(Cold War)」と呼ばれる非常に緊迫した状況にあった。それとともに、当時アメリカは、国内的にも不況や人種差別などの深刻な問題を多数抱えており、それらの問題を打開する切り札として、若いケネディ大統領は国内の期待を一身に集めていた。そうした混迷する時代情勢の中でケネディは上述の言葉を発したわけである。

 あれからすでに60年の月日を経過した現在、またもや同じような国際情勢が目の前に横たわっているといっても過言ではない。崩壊したソ連に代わって中国が資本主義・自由主義陣営の脅威となっている。もちろんわれわれのような小市民が中国の脅威に対して何かができるわけではないが、これから本格的な人生を生きようとする若い人たちにとって、現在と酷似した国際情勢のなかで発せられたこのケネディの言葉の意味をどのように受け止めるかは非常に重要であると思う。

 思うに、われわれは大人になるまでは、親をはじめ誰か周囲に依存していなければひとりで生きていくことが難しい。もちろん、例外もあるが、多くの人は就職するまでは、家庭や学校、就職すれば、会社などの組織に、経済的・社会的に依存することになる。つまり、すべての人間が何らかの形で、社会に依存しながら生きていくわけである。

 しかし、一生涯、社会に依存し続けていては、およそ自発的・積極的な人生を送ることができないであろう。大きな夢や目標を達成することもできない。ケネディは「国」という言葉を使ったが、これは「社会」に置き換えても良いし、「会社」や「組織」に置き換えても良い。仮に「会社」に置き換えた場合、ただ単に毎月決まった日に労働力の対価としての給料を受け取るだけではだめだということである。ケネディ的に言えば、「会社のために何ができているか」「何を貢献しているか」を問いなさい、ということになる。ケネディは、これからの時代、「依存」ではなく「貢献こそが重要であると60年前に説いているのである。

 ともすれば、われわれは「依存」という安全地帯ににどっぷりつかってしまいがちだ。何といってもその方が楽だからだ。しかし、この混迷の時代を生き、そして人生を勝ち抜こうと思うのであれば、「依存」ではなく、「貢献」にシフトチェンジをすることが必要不可欠になることは言を俟たない。

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