【17】知は力なり
16世紀のイギリスの哲学者であるベーコンは言った。
知は力なり
一方、ローマ哲学者のキケロは、それ以前にこう言っていた。
どれほど、たくさんの知識を頭に詰め込んだとしても、使わないなら、意味がないどころか重たいだけだ。
そして、有名なドイツの哲学者ショーペンハウアーは次のように言った。
「知は力なり。」とんでもない。きわめて多くの知識を身につけていても、少しも力を持っていない人もあるし、逆に、なけなしの知識しかなくても、最高の威力をふるう人もある。
さて、この3つの名言から何を学べばよいであろうか?
着眼点が違えば、学びは異なるので正解はないが、回答例をひとつ示しておきたい。
中国「明」の時代に王陽明が唱えた「陽明学」のなかに「知行合一(ちこうごういつ)」という考え方がある。文字どおり、「知」と「行」は別々に存在するのではなく、真の意味での「知」とは必ず「行」、すなわち行動を伴うものであるということである。
ベーコンが言うように「知(知識)」があるというのは大変すばらしいことで、それは大きな力であることに疑いはない。しかし、ベーコンよりもはるか彼方の昔に、キケロはたくさんの知識を詰め込んだとしても、行動に生かさない限り、かえって負担になると喝破していた。まさに「知行合一」である。
そして、ショーペンハウアーはキケロの考えをさらに発展させ、知識が多くても成功するとは限らないし、知識がわずかでも成功を勝ち取る人がいるという。いま風にいえば、偏差値だけでは成功は約束されないということだろうか。
ショーペンハウアーの名言がぴたりと当てはまる人たちがいる。
日本でいえば、尋常小学校卒の松下幸之助(松下電器産業創業者 現パナソニック)がそうであり、名参謀といわれた実質的経営者の藤沢武夫に導かれた本田宗一郎(ホンダ創業者)がそうであった。
世界に目を向けると、「鉄鋼王」といわれた、アンドリュー・カーネギーも自身の知識はわずかであったが大きな成功を収めたひとりである。彼の墓碑銘には次の言葉が記されている。
己より賢き者を近づける術知りたる者、ここに眠る