【9】17頭のラクダを3人で割るには?
昔々、中東のある国で17頭のラクダを飼っていた男性が亡くなった。彼には3人の息子がいて、17頭のラクダを、長男が2分の1、次男が3分の1、三男が9分の1という分配方法を遺言で決めていたそうである。
もちろん、算数的には17頭のラクダを父親の遺言どおりに分配することなどできない。そこで、兄弟はいろいろと話し合ったのだが、良い方法が浮かばず、困っていたところ、たまたま1頭のラクダに乗って付近を通りがかった年老いた旅人に相談することにしたのである。
さて、その旅人は何と言ったか?
旅人はこう言った。
「それなら、私が乗っているこのラクダを君たちに与えようではないか」
兄弟はしばらくその意味が理解できずに立ちすくんでいたが、やがてその旅人がこう言った。
「こうすれば、長男は半分の9頭、次男は3分の1の3頭、三男は2分の1の2頭のラクダをもらえるだろう」
続けて、旅人は言った。
「これでお父さんの遺言どおりに君たち兄弟はラクダを分配できただろう」
「さて、1頭余ったよね?」
「でもこれはもともと私のラクダだからね。それでは、さようなら」
と言い残して、旅人はその場を立ち去って行き、兄弟は大いに喜んだという。
割り切れないものを割り切れるようにする。これこそがまさに「知恵の創造」である。もちろん、これは算数だけの問題ではない。もっと、本質的なところまで求めれば、次のようになる。
われわれはしばしば「何か割り切れないものがある」という思いに駆られることがあるが、それをどうやって「割り切る」かを考えることが、「知恵の創造」である。