【5】情報編集力

 元リクルートで杉並区立和田中学校長を務められた藤原和博氏は、これからの社会においては「情報編集力」なる能力を身につけるべきだと提言されている。
 藤原氏は、幼少期からスポーツや芸術の道を歩んでいるわけではないごく普通の人間がこれからの時代に必要な力とは3つあり、それをまとめて「生きるチカラ」と言っている。

 「生きるチカラ」とは、1.基礎的人間力、2.情報処理力、3.情報編集力から構成されている。そしてこの3つの力は逆三角形の頂点に位置し、それぞれが深く相関している。
 まず、逆三角形の頂点には基礎的人間力が位置している。これは、家庭教育をベースとし、学校生活や部活、アルバイトや旅行などの経験の積み重ねによって強化される、忍耐力、精神力、集中力、持久力などを指す。
 次に、逆三角形の底辺の左側には情報処理力、そして右側には情報編集力が位置している。
 情報処理力とは、いわゆる基礎学力のことで、学校教育で身につける知識や技能を指し、受験に不可欠な能力であると言っても良いと思われる。勉強ができる子というのは、この情報処理力が高いということになる。
 最後、情報編集力とは、藤原氏によれば「正解がないか、正解が1つではない問題を解決する力」だということである。いわゆる思考力、判断力、表現力などがこれに該当する。


 インターネットやAI&ロボットの登場は、次々と人間の情報処理力を奪っていくといわれて久しい。藤原氏も、これからは情報処理力から情報編集力へのシフトが必要であることを提唱する。そうすると、情報処理力のある人間はいらなくなりそうだが、藤原氏はそこまでは言わない。藤原氏は今後も情報処理力7割、情報編集力3割が問題を解決する力として必要だと主張する。
 つまり、インターネットやAI&ロボットは「正解のない問題」、すなわち「考える問題」を解決する情報編集力まではまだ十分に保有しておらず、人間に及ばないということだ。


 藤原氏は、正解のない問題を解き、結論に達すると、そこにあるのは当事者や関係者が納得する「納得解」だという。むろん、納得解は一朝一夕に出るものではなく、何度も試行錯誤の上、作り出していくものであるから、本や雑誌の編集の仕事を連想して、「情報編集力」と名付けたそうである。


 

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